生命誌コーギ・その2 動かして学ぼう ゲノムを医療に生かすには?

しかけカードの第2段は、動かして考えるゲノムと医療の関係です。

 

ヒトという種と他の生物との比較をまずは念頭に置いておこなわれた「ヒトゲノム解読計画」が2003年に完了し、例えばヒトとチンパンジーの塩基配列の差は1.2パーセントだなんていう、意外なんだかこんなもんなんだか素人には判断しづらい微妙な数値も判明しました。じゃぁ同じヒト同士の塩基配列の違いっていったいどれくらい?っていう疑問は当然出てくるわけで、それは0.1パーセントなんだそうです。つまり人類60億人は、ゲノムレベルで見ると99.9パーセントが同じっていうこと。

 

これまでの医療は、人類の共通部分に目をつけて行われてきたと考えることができます。試したことがないから分かりませんが、腹痛のインド人に正露丸を飲ませててもそこそこ効くのです、きっと。視点を変えて、ゲノム解析で判明した違ってる0.1パーセントに着目して、他の人にはあんまり効かないけどぼくには無茶苦茶に効く薬や治療法を見つけようというのが、最近注目を集めている「オーダーメイド医療」です。日本でも巨額の研究費が投じられ、研究が進んでいるそうです。理屈ではよく分かりますね。

 

ところが、「でもちょっと待てよ。本当にそうなの?」ってのが今回の講義のテーマなのです。塩基配列が0.1パーセント違うってことは、そのまま現在の僕と友人A君が0.1パーセントしか違わないってことを表すわけではありません。受精卵から今の僕なりA君なりができる過程には、ゲノムだけを見ていても分からない様々な要因がからんできます。その各段階もしっかり見ましょうよ、ってメッセージを、今回はしかけを使って表現してみました。文章で書いてもこれだけかかることをカード1枚で表現しろだなんて、相変わらず無茶な要求でした。