共生モビール・その1 細胞を食べて植物に

いつまでネタが続くか毎年ドキドキものの紙のおまけ、今年度は、決まってみれば何で今までなかったのかが不思議な紙工芸の王道、ペーパーモビールでお届けします。紙はカードよりワンランク厚くして、組み立て簡単な型抜き済み、調子にのって糸までつけちゃいましたので、接着剤と10分前後の時間があれば、自室や仕事場の窓辺で涼しげに揺れるモビールの完成です。初回のモチーフは、植物の二次共生の初期段階を今もその体内や生活環に留める鞭毛虫〈ハテナ〉。

 

一昔前の一般向けの進化の解説書を読んでいると、よく「ミッシングリンク」なんて言葉を目にすることがありました。Aという動物(あるいは化石)がいて、その祖先種Cという動物の化石があって、でもその中間種と考えられる動物Bの化石が発見されていない場合、この動物Bのことを「失われた鎖=ミッシングリンク」と呼びます。植物の分類の中でも最も大きなくくりである「一次植物」と「二次植物」の、まさにミッシングリンクにあたるこの生きものを見つけたのは我らがサムライ日本の岡本典子さん。それまでに見慣れた鞭毛虫とは違ったふるまいをすることから、研究室で「ハテナ虫」という愛称で呼んでいたのが、2005年の論文発表後そのまま学名になってしまったという、痛快な由来を持つ生きものです。付属の解説書には、共生によってもたらされた植物の進化や、植物と動物の中間のようなハテナの興味深い生活環も紹介していますので、風に揺られるハテナを眺めながら合わせてお楽しみください。